大阪・中之島 レクシア特許法律事務所のブログです。

2019年3月5日火曜日

意匠法の大改正について

鈴木です。

3月1日に意匠法の一部を改正する法律案が閣議決定されました。

改正内容は以下の通りです。

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(1)保護対象の拡充
物品に記録・表示されていない画像や、建築物の外観・内装のデザインを、新たに意匠法の保護対象とします。

(2)関連意匠制度の見直し
・関連意匠の出願可能期間を、本意匠の登録の公表日まで(8か月程度)から、本意匠の出願日から10年以内までに延長します。
・関連意匠にのみ類似する意匠の登録を認めます。

(3)意匠権の存続期間の変更
「登録日から20年」から「出願日から25年」に変更します。

(4)意匠登録出願手続の簡素化
・複数の意匠の一括出願を認めます。
・物品の名称を柔軟に記載できることとするため、物品の区分を廃止します。

(5)間接侵害規定の拡充
「その物品等がその意匠の実施に用いられることを知っていること」等の主観的要素を規定することにより、取り締まりを回避する目的で侵害品を構成部品に分割して製造・輸入等する行為を取り締まれるようにします。
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上記(1)(5)の中でも特に「(1)保護対象の拡充」及び「(2)関連意匠制度の見直し」が、今後の知財戦略に与える影響が大きいと考えます。

(1)保護対象の拡充については、新たに以下のような意匠が登録可能になります。

(例)
・クラウド上に保存され、ネットワークを通じて提供される画像の意匠
・壁や道路等に投影された画像の意匠
・建築物の外観や内装の意匠

やはり意匠権を取得できなかったものができるようになるという点は非常に大きい変化です。
それにより、上記意匠に関連のあるネットワーク業界や建築業界等の企業は、自社独自のデザインを守るための手段として新たに意匠権を活用できるようになり、意匠権を加えたより強い知財戦略を立てることが可能になります。

また、内装の意匠権については、建築関連企業だけでなく、全国にチェーン展開しているような飲食関連や小売関連の企業にとっても企業独自のブランドイメージを守るために活用できるものと考えます。

 次に、(2)関連意匠制度の見直しついては、これにより、例えば、自動車等のマイナーチェンジのように、長期にわたり一貫したコンセプトに基づき継続して開発されるデザインを関連意匠として保護することが可能になります。

 また、従来であれば、本意匠の出願時点で、先行きが読めない中で将来のデザイン変更まで見越した複数の関連意匠の出願を検討・出願しなければなりませんでしたが、本改正により、新たなデザインが完成した時点で関連意匠の出願を検討できるようになったため、デザイン開発に則した無駄の少ない出願戦略を立てやすくなります。

 ただし、関連意匠の出願期限は延長されたものの、将来出願する予定の関連意匠に類似する意匠がその関連意匠の出願前に他社により公開・出願されてしまえば、その関連意匠を登録することはできませんので、法改正後であったとしても、広い意匠権群を形成するために、本意匠の出願時点で、将来のデザイン変更等を予測して複数の関連意匠を出願するというスタンスは変わらないと考えます。知財において先を予測して先手を取ることは重要です。
 
本改正の内容を踏まえて、弊所では、知財戦略に関して継続すべきところと新しくすべきところを明確にし、最適な戦略をクライアントにご提案できるように今後も情報収集と分析を続けて参りたいと思います。

鈴木行大

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