大阪・中之島 レクシア特許法律事務所のブログです。

2019年3月7日木曜日

ミャンマー新商標法について

田中景子です。

ミャンマー商標法(以下、「新商標法」といいます。)が2019年1月30日に議会を通過しました。新商標法では、出願による商標登録が認められました。

新商標法の概要
新商標法の概要は以下の通りです。
・先願主義を採用しました。出願日(願書の受理日)を基準に出願が審査されます。願書には、商標、国際分類に基づく区分及び指定商品・指定役務、出願人の情報等、優先権を主張する場合はその旨を記載します。商標所有権宣誓の登記がある場合、登記書類を願書に添付します。
・商標の所有権の宣誓を登記した商標について、新商標法へ自動的に移行するとの規定はなく、ミャンマーで商標の保護を享受するためには、新たに商標出願を行い、商標登録する必要があります。
・審査官は、商標の絶対的要件について審査をします。絶対的要件に問題がないと判断された出願は、出願公告されます。その後、出願公告日から60日間の異議申立期間が始まります。異議申立の手続きでは、絶対的要件及び相対的要件が異議理由となります。
・異議申立期間が問題なく経過すれば、登録料を支払い商標登録が認められます。商標権の権利期間は、出願日から10年間です。
・登録から過去3年間の不使用に基づく取消審判制度や無効審判制度などの規定も設けられています。
・その他、新商標法の規定によると、ライセンスの登録申請がないライセンス契約は、効力を有さないと明記されています。したがって、ライセンス許諾予定の商標の場合は、商標出願を行い、商標登録後、当該商標登録に基づくライセンス申請を行う必要があります。

今後の留意点
新商標法は、大統領の発効日通知、及び、関連規則等や官庁(The Myanmar Intellectual Property Office (MIPO)の設立など)の整備が完了された後、発効・施行される予定です。

新商標法の施行に先立っての留意点は以下2点です。

 (a) 商標の所有権の宣誓登記等
ミャンマーで商標の保護を享受するためには、従来からの慣行通り、1908年の登録法に基づく商標の所有権の宣誓登記、及び、日刊紙での警告通知を行うことが必要です(実務上、これらの文書は、商標の所有権を主張する際の証拠書類とされています)。
なお、商標の所有権の宣誓登記を行った商標については、新商標法においても、以下のメリットを享受できる可能性があります。
新商標法では、同一または類似の商標の同日出願について、まず、両者による協議が義務づけられ、かかる協議不成立の場合は、審査官の決定に従わなければならないと規定されています。現地代理人の推測では、上記の決定判断において、出願商標が所有権宣誓登記されているか、ミャンマー国内で使用されているかなどの事実が考慮されうるとのことです。したがって、同日出願に該当した際の対応策として、商標の所有権の宣誓登記、及び、ミャンマーでの出願商標の使用実績がある場合は、その証拠を蓄積しておくことが望ましいと考えます。

(b)使用実績に関する証拠の準備(冒認出願への対応として)
ミャンマーですでに使用が始まっている商標の場合は、第三者による冒認出願への対応策として、ミャンマー国内における使用商標の新聞・雑誌での広告掲載、製品の売上高、シェアなどの商標の使用実績を証拠として保存しておくことも望ましいです。新商標法では、他人の未登録の周知商標と同一または類似の出願商標に対して異議申立または無効審判を請求できます。したがって、これらの証拠を蓄積しておくことで、たとえば、新商標法の施行後、ウォッチングで見つかった商標に迅速に異議申立を行うことができます。


田中景子


↓Ranking check.
にほんブログ村 士業ブログ 弁理士へ
にほんブログ村
にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ
にほんブログ村