松井です。
最近は、会食などの食べ物系の記事が多かったので、少し実務系の記事に戻します(汗)。
今年2月28日に、商標に関する最高裁判決「エマックス事件」がでました。
(平成27年(ネ)第1876号 不正競争防止法による差止等請求本訴、商標権侵害行為等差止等請求反訴事件)
5年の除斥期間が経過している商標権について、商標法第4条第1項第10号を理由とする無効審判が請求できない場合に、侵害訴訟において「特許法第104条の3に基づく抗弁」は、不正競争の目的で登録したものを除いて、認められないとされました。
しかし、商標法第4条第1項第10号の周知商標の所有者が自己(権利行使されている者)である場合には「権利濫用の抗弁」は認められる場合があると判断されました。
除斥期間が経過した無効理由を有する商標権に基づく権利行使において、特許法第104条の3に基づく抗弁が認められるかどうかは、認められないとする否定説が有力であったと思いますが、この度、最高裁がその点を明確にしました。
この点については、私は過去、日本弁理士会中央知的財産研究所で、論文を発表しています(パテント2010, Vol.63 No.2 (別冊no.2))。
【特許法104条の3の商標法における意義】
http://www.lexia-ip.jp/Papers/matsui/paper_matsui_104-3.pdf
この論文の4.1において除斥期間を経過した登録商標との関係について検討しています。
今回の最高裁判決は、否定説に立ちながらも、当事者間では権利濫用の抗弁を認めることによって、権利行使が妥当でない場合には、商標権侵害を認めない立場をとったものと思います。単なる条文解釈ではなく、衡平について十分に検討した点において賛成できる最高裁判決です。
本判決については、関西特許研究会(KTK)の会合で、
学者、弁護士、弁理士(私)で、徹底討論します。
ご都合のつくKTK会員の方は、是非ご参加ください。
http://ktk-ip.com/kaigou/2017/05/2017516.html
以下、会合案内より。
(1)日時
平成29年5月16日(火)6:30~8:30p.m.
(2)場所
日本弁理士会近畿支部 会議室
(3)テーマ
(仮題)最高裁平成29年2月28日「EemaX事件」判決をめぐって
(4)パネリスト
立命館大学法学部法学科教授 宮脇 正晴 先生
弁護士 室谷 和彦 先生
弁理士 松井 宏記 先生
(5)概要
平成29年2月28日に、不正競争防止法による差止等請求本訴、商標権侵害行為差止等請求反訴事件について、最高裁判決がなされました。同最高裁判決では、商標法4条1項10号を理由とする無効審判請求がないまま設定登録日から5年を経過した後に、商標権侵害訴訟の相手方が、商標法4条1項10号該当をもって商標法39条、特許法104条の3第1項の抗弁を主張することの可否、その場合の権利濫用の抗弁の可否について判断が示されています。また、同最高裁判決では、不正競争防止法2条1項1号の「需要者の間に広く認識されている」の原審の判断について、法令の適用を誤った違法があるとの判断も示されています。
本会合では、この最新の最高裁判決について、パネリスト3名の先生方に登壇いただき、様々な角度から熱き討議をしていただく予定です。
松井宏記
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