大阪・中之島 レクシア特許法律事務所のブログです。

2019年7月30日火曜日

【商標実務】中国商標法改正

宗助です。

クライアントの皆さまから、「中国における自社商標の他人による先取り出願・登録への対応」についてご相談を頂くことがよくあります。
この場合、その出願・登録に対して、異議申立・無効審判・不使用取消審判のいずれかを請求する対応がメインです。

これに関連し、既にご存知の方も多くいらっしゃるかと思いますが、2019年4月23日に、中国の第十三回全国人民代表大会常務委員会第十回会議において、「中華人民共和国商標法」の改正を行うとの決定が下されました。

特に「使用意思のない悪意の商標登録出願について、商標局は審査の段階で拒絶をすることができ、また何人も異議申し立て、無効審判を請求することができる」と改正された点は、上記「中国における自社商標の他人による先取り出願・登録」に対して異議申立・無効審判を行う場合の根拠として、非常に有用であると考えます。

これまでは、このような「他人による先取り出願・登録」に対して決定打となるような根拠条文がなかったことを考えれば、今回の改正により、「他人による先取り出願・登録」の取消・無効に有用な根拠条文が追加されたことは、真の権利者にとって、非常に有利な改正点ではないかと思います。

使用意思がないことをどのように判断するか等、具体的な判断基準は追って決定されるようです。今後の動向を引き続きフォローアップしたいと思います。
なお、当該改正は2019年11月1日より施行されるとのことです。

弊所では、中国の現地代理人と綿密に連携・協力し、「中国における自社商標の他人による先取り出願・登録」への対応を行っております。
お困りの場合は、是非一度ご相談を頂けますと幸いです。

宗助智左子


情報出所(中国語):
中華商標協会(CTA)
http://www.cta.org.cn/ldjh/201904/t20190429_50148.html
中国商標局
http://sbj.cnipa.gov.cn/zcfg/201905/t20190528_301475.html


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2019年7月24日水曜日

【意匠実務】意匠審査基準ワーキンググループ開始

松井です。

本日、意匠審査基準ワーキンググループが開催されます。
配布資料等はこちらで見ることができます。

改正意匠法はすでに確定していますが、詳細は審査基準で決めることが多くなっています。
以下のスケジュールで開催されるようですが、各回ともに必見です。
(特に、山場は9月・10月開催の関連意匠、画像、建築物、内装かと。)

【WG 開催日と主な検討項目(予定)】
■第15回 WG(今回)
  ・全検討事項の概要
  ・基準改訂の方向性
  ・創作非容易性要件の明確化
  ・物品区分表の廃止
■第16回 WG(2019年9月頃開催予定)
・関連意匠
■第17回 WG(2019年10月頃開催予定)
  ・画像意匠
  ・建築物・内装意匠
  ・不登録事由
  ・組物の意匠・一意匠の考え方
■第18回 WG(2019年11月頃開催予定)
・報告書案
■第19回 WG(2019年12月頃開催予定)
  ・予備日(必要に応じて開催)
■意見募集手続
■第19回又は第20回WG(2020年1月頃開催予定)
  ・意見募集後の改訂点(必要に応じて開催)

今日から来年に向けて、かなりのスピードで色々なことが決まっていくと思います。
弊所でも審査基準の動向を常にチェックしていきたいと思います。

松井宏記

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2019年7月22日月曜日

【商標実務】「アディダス三本線」商標から見た欧州における図形商標の識別力

田中景子です。

欧州連合(EU)では、ご存じのとおり、欧州連合商標(EUTM)の商標登録を取得すれば、EU全域にその効力が及びます。EUTMは、EU加盟国(28ケ国)で個別に国内登録するよりも経済的で手続も簡易です。
審査は、主として識別性のみです。先行商標の有無は審査されません。EUTMでは、識別力が認められ、出願公告期間に異議申立がなければ、早く商標登録ができるメリットがあります。

一方で、EUTMの出願では、不安定要素もあります。

第1に、EUTMには、無効審判があり、無効理由は、識別力などの絶対的拒絶理由、先後願などの相対的拒絶理由の双方です。商標登録できたとしても、EU内に同一類似の先行商標権者がいる場合、無効審判を請求されるリスクがあります(ただし、無効理由のあるEUTMが5年以上登録および使用されていることを黙認していた先行権利者は、そのEUTMの商標登録の有効性を争うことができません)。

第2に、EUTMでは、識別力の判断は、EU域内の需要者・取引者を基準にします。たとえば、EU域内の一部の国のみで使用されている標章であっても、EUTMの審査で記述的商標に該当するとの拒絶理由を受ける場合があります。また、使用による識別力獲得の立証範囲はEU全域です。

最近の例では、2014年にEUTMの登録が認められたアディダス3本線の商標がありましたが、2016年にベルギーの会社から欧州連合知的財産庁(EUIPO)に無効審判が請求されて無効になりました。


アディダスはこれを不服として、欧州連合一般裁判所(General Court of the European Union)に提訴していました。裁判所は、使用証拠が登録商標と同一でなかったこと(黒の背景に白のストライプなど配色が登録商標と逆であるなど)、使用証拠はわずか5つの加盟国に関するものであることから、3本線商標は、EU全域において使用による識別力を獲得したとはいえないとして、EUIPOの無効審決を支持しました(現時点では欧州司法裁判所(ECJ)への上訴の有無は不明です)。

本件から分かることは以下の2つです。

第1に、3本線商標は、EUIPOの審査では識別力を欠くとの拒絶理由を受けずに登録となったものの、無効審判では識別力を欠き、且つ、セカンダリーミーニングも有さないとして、無効にされました。EUIPOの審査をクリアしていたとしても、無効審判で登録無効となるリスクに注意が必要です(逆にいえば、EUで使用の障害となる先行登録商標があった場合も、識別力を欠く場合、対抗措置として、無効審判を請求する選択肢があります)。

第2に、識別力が弱いと思われる商標については、EUTMにおけるセカンダリーミーニングの立証は、願書に記載された商標(「商標の説明」を含む)と使用商標の一致性の判断が厳密に行われていること、且つ、5つの加盟国だけでの立証は不足しており、EU全域の需要者の間で広く認識されていることを立証する必要があることがわかります。

本件を参考に、識別力が弱いと思われる商標のEUTM出願の場合には、権利の安定性と立証の厳密性についてご注意ください。

田中景子

資料:
The General Court of the EU confirms the invalidity of the adidas EU trade mark which consists of three parallel stripes applied in any direction:
https://curia.europa.eu/jcms/upload/docs/application/pdf/2019-06/cp190076en.pdf


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2019年7月18日木曜日

【募集締切!満員御礼!】東京開催 「意匠大改正 その内容と予想される実務ーデザインがブランド化する時代に向けてー」

松井です。

このブログ記事で案内しておりました意匠法改正に関するレクシア知財セミナーですが、
定員70名に達しましたので、本日募集を締め切りました。


みなさま、参加申し込みありがとうございました!
当日は精一杯講演させていただきます。

相談会にも多くの方に申し込みいただきました。ありがとうございます。

参加者の皆様、当日はどうぞよろしくお願いいたします。

松井宏記

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2019年7月17日水曜日

【商標実務】カナダ商標法改正

宗助です。

2019年6月17日に、カナダで改正商標法が施行されました。

今回の改正による変更点はいくつかありますが、
大きなところとしては、以下の点が変更されています。

・マドプロに加盟。
・ニース国際分類を採用。
・これまで要求されていた「出願の基礎(base)」(使用or使用意思or本国登録・使用など)が不要に。
・権利存続期間が、従前の15年から10年に短縮。

特に、「マドプロに加盟」した点は、実務への影響が一番大きいかと思います。
複数国での権利化をご希望の場合、マドプロルートによる商標出願をご希望される場合が多いです。
今後は、他の国と併せてカナダの指定も可能です。
カナダへの商標出願がより簡便に行えるようになったのは、大きなメリットと思います。

逆に、カナダ出願の際にこれまで要求されていた「出願の基礎(base)」が不要となったことで、自社商標を第三者に先取り出願されるリスクは高まる可能性があります。
特に海外で著名な商標については要注意です。
対策としては、カナダへできるだけ早期に商標出願・登録を行っておくことが望ましいです(国内外で著名な商標については特に)。

また指定商品・役務に関し、これまでは求められていなかったニース国際分類に基づく「区分」の記載が今後は要求されますので、指定商品・役務の記載の検討の際に注意が必要です。

まだ改正後間もないので、引き続き、実務において今後の動向を注視したいと思います。
実務上また新たな情報を入手しましたら、皆さまに情報共有させて頂きます。

宗助智左子

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2019年7月16日火曜日

博多で意匠実務の講師と博多祇園山笠

松井です。

先週金曜日と土曜日、博多に出張しました。
日本弁理士会九州会で、意匠実務の講師を務めるためです。
4回コースの研修で、最初の2回は私が担当講師です。

意匠の演習問題を参加者のみなさんと一緒に検討し、解説させていただきました。
講師の私も楽しい研修となりました。

先週末の博多は、博多祇園山笠のクライマックス。
法被姿の人、ふんどし姿の人が街にチラホラ。

山笠が中洲や天神のいろんなところに飾られていました。
「飾り山笠」は10メートル前後の高さがあります。圧巻!

【飾り山笠】

【サザエさん山笠】



博多の飲食店では、お店の人から博多祇園山笠についていろいろと教えていただきました。
20年ぶりくらいに天神の屋台にも行きました。(屋台の数はだいぶん減ったように思います)





来週末も博多に行きます。
2回目の演習です。関連意匠と部分意匠をみっちりやります。
九州の皆様よろしくお願いします。

松井宏記

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2019年7月3日水曜日

レクシア知財セミナー「炭酸パック化粧料事件の知財高裁大合議判決の概要と今後の知財実務に与える影響」のご案内

山田です。

先日、ご報告をさせていただいた炭酸パック化粧料事件の知財高裁大合議判決に関するセミナーを2019年7月25日(木)に開催いたします。下記をご覧いただき、是非ご参加ください(企業の知的財産ご担当者向け)。

弊所で原告(特許権者)の代理人をさせていただいた炭酸パック化粧料の発明(発明の名称:二酸化炭素含有粘性組成物)に関する特許権侵害事件(知財高裁平成30年(ネ)第10063号)に関し、本年6月7日に知財高裁大合議の判決が出され、約1億4000万円の損害賠償が認められました。
この事件は、2005年に知財高裁が設置されて以降、13件目の大合議判決ですが、特許法102条2項に基づく損害賠償額における利益額の意義、推定覆滅事由の判断基準、特許法102条3項の実施料相当額の算定手法に関する知財高裁が統一的な見解が示された重要判決です。

知的財産権侵害訴訟における損害賠償額の算定手法に関しては、本年5月10日に成立した改正特許法でも新たな規定が設けられましたが、今後の知的財産権侵害訴訟における損害賠償額を検討する上では、今回の大合議判決と改正特許法を十分に理解しておくことが必要になります。
本セミナーでは、本事件の代理人・補佐人を務めた山田威一郎弁護士・弁理士、迫田恭子弁理士から、本判決の概要と実務上の意義をご説明させていただくほか、炭酸パック化粧料の発明の概要、権利化までの手続や分割出願等の出願戦略、無効審判の対応、侵害訴訟の訴訟戦術等に関してもできる限りご説明させていただきます。

セミナーの詳細および申し込み用紙は、以下のリンク先をご覧ください。

http://www.lexia-ip.jp/pdf/49th_seminar.pdf

皆様のご参加をお待ちしています。

山田威一郎


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