大阪・中之島 レクシア特許法律事務所のブログです。

2019年3月11日月曜日

Brexit 合意なき離脱に備えて

松井です。

イギリスがEUから離脱する離脱日、2019年3月29日が迫っています。
しかも、EUとイギリスと間に合意がない離脱(Hard Brexit)になるかもしれません。

みなさんもご存知の通り、Brexitによって、知財で大きく影響を受けるのは意匠商標です。

以下、「合意なき離脱の場合」の取り扱いをまとめます。

(1)全てのEU登録(ヨーロッパ商標およびヨーロッパ意匠、マドプロEU指定およびハーグEU指定)は、離脱後(2019年3月29日後)、イギリスに自動的に拡張されます。
 よって、離脱時点(2019年3月29日)で登録済みの案件は、何もしなくていいということになります。

(2)しかし、離脱時点(2019年3月29日)で、出願中のEU案件(ヨーロッパ商標およびヨーロッパ意匠、マドプロEU指定およびハーグEU指定)は、自動的にはイギリスに拡張されません。イギリスで保護を求める場合には、出願人は離脱日(2019年3月29日)から9ヶ月以内(2019年12月29日まで。しかし、12月29日は日曜なので次の30日まで)に、イギリスで同等の権利を求めるために申請をしなければなりません。この場合、EU出願の出願日、優先日、シニオリティは維持されます。
 よって、離脱時点(2019年3月29日)で出願中の案件は、イギリスに再出願するかどうか検討を行い、再出願を行う場合には2019年12月29日までに再出願を行います。

(弊所取扱の事案で上記(2)に該当する場合には、個別に連絡致します。)


松井宏記


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2019年3月7日木曜日

ミャンマー新商標法について

田中景子です。

ミャンマー商標法(以下、「新商標法」といいます。)が2019年1月30日に議会を通過しました。新商標法では、出願による商標登録が認められました。

新商標法の概要
新商標法の概要は以下の通りです。
・先願主義を採用しました。出願日(願書の受理日)を基準に出願が審査されます。願書には、商標、国際分類に基づく区分及び指定商品・指定役務、出願人の情報等、優先権を主張する場合はその旨を記載します。商標所有権宣誓の登記がある場合、登記書類を願書に添付します。
・商標の所有権の宣誓を登記した商標について、新商標法へ自動的に移行するとの規定はなく、ミャンマーで商標の保護を享受するためには、新たに商標出願を行い、商標登録する必要があります。
・審査官は、商標の絶対的要件について審査をします。絶対的要件に問題がないと判断された出願は、出願公告されます。その後、出願公告日から60日間の異議申立期間が始まります。異議申立の手続きでは、絶対的要件及び相対的要件が異議理由となります。
・異議申立期間が問題なく経過すれば、登録料を支払い商標登録が認められます。商標権の権利期間は、出願日から10年間です。
・登録から過去3年間の不使用に基づく取消審判制度や無効審判制度などの規定も設けられています。
・その他、新商標法の規定によると、ライセンスの登録申請がないライセンス契約は、効力を有さないと明記されています。したがって、ライセンス許諾予定の商標の場合は、商標出願を行い、商標登録後、当該商標登録に基づくライセンス申請を行う必要があります。

今後の留意点
新商標法は、大統領の発効日通知、及び、関連規則等や官庁(The Myanmar Intellectual Property Office (MIPO)の設立など)の整備が完了された後、発効・施行される予定です。

新商標法の施行に先立っての留意点は以下2点です。

 (a) 商標の所有権の宣誓登記等
ミャンマーで商標の保護を享受するためには、従来からの慣行通り、1908年の登録法に基づく商標の所有権の宣誓登記、及び、日刊紙での警告通知を行うことが必要です(実務上、これらの文書は、商標の所有権を主張する際の証拠書類とされています)。
なお、商標の所有権の宣誓登記を行った商標については、新商標法においても、以下のメリットを享受できる可能性があります。
新商標法では、同一または類似の商標の同日出願について、まず、両者による協議が義務づけられ、かかる協議不成立の場合は、審査官の決定に従わなければならないと規定されています。現地代理人の推測では、上記の決定判断において、出願商標が所有権宣誓登記されているか、ミャンマー国内で使用されているかなどの事実が考慮されうるとのことです。したがって、同日出願に該当した際の対応策として、商標の所有権の宣誓登記、及び、ミャンマーでの出願商標の使用実績がある場合は、その証拠を蓄積しておくことが望ましいと考えます。

(b)使用実績に関する証拠の準備(冒認出願への対応として)
ミャンマーですでに使用が始まっている商標の場合は、第三者による冒認出願への対応策として、ミャンマー国内における使用商標の新聞・雑誌での広告掲載、製品の売上高、シェアなどの商標の使用実績を証拠として保存しておくことも望ましいです。新商標法では、他人の未登録の周知商標と同一または類似の出願商標に対して異議申立または無効審判を請求できます。したがって、これらの証拠を蓄積しておくことで、たとえば、新商標法の施行後、ウォッチングで見つかった商標に迅速に異議申立を行うことができます。


田中景子


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2019年3月5日火曜日

意匠法の大改正について

鈴木です。

3月1日に意匠法の一部を改正する法律案が閣議決定されました。

改正内容は以下の通りです。

------------------------------
(1)保護対象の拡充
物品に記録・表示されていない画像や、建築物の外観・内装のデザインを、新たに意匠法の保護対象とします。

(2)関連意匠制度の見直し
・関連意匠の出願可能期間を、本意匠の登録の公表日まで(8か月程度)から、本意匠の出願日から10年以内までに延長します。
・関連意匠にのみ類似する意匠の登録を認めます。

(3)意匠権の存続期間の変更
「登録日から20年」から「出願日から25年」に変更します。

(4)意匠登録出願手続の簡素化
・複数の意匠の一括出願を認めます。
・物品の名称を柔軟に記載できることとするため、物品の区分を廃止します。

(5)間接侵害規定の拡充
「その物品等がその意匠の実施に用いられることを知っていること」等の主観的要素を規定することにより、取り締まりを回避する目的で侵害品を構成部品に分割して製造・輸入等する行為を取り締まれるようにします。
------------------------------

上記(1)(5)の中でも特に「(1)保護対象の拡充」及び「(2)関連意匠制度の見直し」が、今後の知財戦略に与える影響が大きいと考えます。

(1)保護対象の拡充については、新たに以下のような意匠が登録可能になります。

(例)
・クラウド上に保存され、ネットワークを通じて提供される画像の意匠
・壁や道路等に投影された画像の意匠
・建築物の外観や内装の意匠

やはり意匠権を取得できなかったものができるようになるという点は非常に大きい変化です。
それにより、上記意匠に関連のあるネットワーク業界や建築業界等の企業は、自社独自のデザインを守るための手段として新たに意匠権を活用できるようになり、意匠権を加えたより強い知財戦略を立てることが可能になります。

また、内装の意匠権については、建築関連企業だけでなく、全国にチェーン展開しているような飲食関連や小売関連の企業にとっても企業独自のブランドイメージを守るために活用できるものと考えます。

 次に、(2)関連意匠制度の見直しついては、これにより、例えば、自動車等のマイナーチェンジのように、長期にわたり一貫したコンセプトに基づき継続して開発されるデザインを関連意匠として保護することが可能になります。

 また、従来であれば、本意匠の出願時点で、先行きが読めない中で将来のデザイン変更まで見越した複数の関連意匠の出願を検討・出願しなければなりませんでしたが、本改正により、新たなデザインが完成した時点で関連意匠の出願を検討できるようになったため、デザイン開発に則した無駄の少ない出願戦略を立てやすくなります。

 ただし、関連意匠の出願期限は延長されたものの、将来出願する予定の関連意匠に類似する意匠がその関連意匠の出願前に他社により公開・出願されてしまえば、その関連意匠を登録することはできませんので、法改正後であったとしても、広い意匠権群を形成するために、本意匠の出願時点で、将来のデザイン変更等を予測して複数の関連意匠を出願するというスタンスは変わらないと考えます。知財において先を予測して先手を取ることは重要です。
 
本改正の内容を踏まえて、弊所では、知財戦略に関して継続すべきところと新しくすべきところを明確にし、最適な戦略をクライアントにご提案できるように今後も情報収集と分析を続けて参りたいと思います。

鈴木行大

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2019年2月28日木曜日

意匠商標分野における弁理士の成長過程について

松井です。

少し前になりますが、
パテント誌に「意匠商標分野における弁理士の成長過程について」というコラムというか読み物を掲載していただきました。


意匠商標を専門とする弁理士が実務経験を重ねるに際しての私なりの考えを発表しました。

これから意匠商標系弁理士を目指す方、意匠商標系弁理士として歩みだした方々に読んでいただきたいと思います。

どの分野の弁理士であれ一番重要なのは、絶えず勉強をし続け、情報を発信し、実務に生かすことです。
そのサイクルを続けてクライアントの信頼を獲得することです。どの過程が欠けてもダメだと思います。
奇抜な方法で目立とうとしてもいい弁理士になれません。

絶えず勉強をし続け、情報を発信し、実務に生かし、クライアントの信頼を獲得する。
この王道を歩むしかありません。

という私もまだ道半ば。
この王道を歩むべく精進したいと思います。

松井宏記

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2019年2月26日火曜日

意匠専門家として徳島へ(意匠出願のタイミングについて)

松井です。
先日、意匠専門家として、徳島まで初めて行ってきました。

専門家派遣事業では、日本のいろいろな場所にお呼びいただいておりますが、
今回は初の徳島です。

【徳島駅前】
ヤシの木が印象的でした。

道には阿波踊りの絵があります。


その横には阿波踊りの写真展が。さすが徳島。


ところで、意匠相談でよくお聞きする話が、製品開発と意匠出願のタイミングです。

一般的には、図面やデザインが確定した段階で意匠出願に進んでいくのがいいと思います。

しかし、会社ごとに、デザイン確定と試作品製作・発表その他作業のタイミングが異なります。

デザイン確定後、製品発表がだいぶん後の場合には、出願のタイミングをよく考えないといけません。先願主義があるので出願を急ぐ必要がありますが、デザイン確定と製品発表の期間が長いようだと、あまり早く出願すると製品発表より先に意匠公報が出てしまうリスクがあるので秘密意匠にする必要があります。

また、外国出願が必要な場合、秘密意匠が使えない国がありますので、あまり早期に出願すると日本では公報発行を遅らせることができたとしても、外国で公開されてしまうことがあります。

デザイン確定後に、デザイン変更されることもあります。関連意匠は本意匠の意匠公報発行まで(おおよそ本意匠の出願から6ヶ月程度)は出願できますので、その可能性も考慮した上で、意匠出願のタイミングを検討する必要があります。

いつ意匠出願すべきか。
実は、一般化できない奥の深い問題であると思います。
(だからこそ、意匠専門家が必要なのだと思います)

相談後、そんなことを考えながら、徳島から大阪へとバスで戻ってきました。


松井宏記

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2019年2月12日火曜日

World Trademark Review 2019での評価

松井です。

World Trademark Review(WTR)は、
毎年、独自の取材に基づいて、World's Leading Trademark Professionalsを選んでいます。

今年も、日本部門で掲載いただきました。(過去の掲載についてはこちら

【WTR2019から抜粋】

次のように紹介されています。
「Hiroki Matsuiは、アジア、ヨーロッパ、アメリカの商標に関する知識を兼ね備えており、クライアントに対して、単なる法的アドバイスとは対照的な実務的なアドバイスを、エクセレントな英語で提供している。」

現地代理人の誰かが、このように私をWTRに紹介してくれたのだと思います。

しかし、これは私個人ではなく、レクシアの意匠商標部門に対する評価と思います。
我々の仕事を現地代理人が評価してくれたものです。

この紹介に負けないよう、
これからも、実務的なアドバイスを提供していきたいと思います!

松井宏記


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2019年2月10日日曜日

大学でのデザイン法規の授業

松井です。

昨年より2年間、後期のみ、京都美術工芸大学にて「デザインと法規」という授業の非常勤講師をしていました。
こちらの記事もご覧ください)
毎回、30名ほどの学生が出席しており、商標法、意匠法、著作権法、不正競争防止法について講義しました。

未来のデザイナーへの講義ですので、法学寄りな講義をするとあまり面白くありません。
そこで、毎回、その時々の時事知財ネタを話すなどしていました。
(例えば、ある回はティラミスヒーロー案件の解説など)

講義していると、この話を理解してもらえているか、興味をもってもらえているか、というのは心配になりがちです。
毎回、小レポートを書いてもらうと、自分の頭で理解しているな、自分の頭で考えて質問を書いているな、というのがわかってこちらも楽しく講義させていただきました。
また、学生の意見を読んでいて、私自身も勉強させていただきました(これ大事です)。

京都美術工芸大学では事務局の方々にも大変お世話になりました。
事務局のアットホームな雰囲気に、大学に行くと毎回ホッコリしました。

来年からは「デザインと法規」の授業は、弊所の鈴木弁理士に託しました。
また彼も学生からいろいろなことを学ばせてもらうと思います!


(学内にある鬼の像。毎回気合いを入れてもらいました。)

松井宏記

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