山田です。
4月25日の新聞各紙に、新日本製鉄が韓国鉄鋼大手ポスコなどを相手に営業秘密の不正使用に基づく損害賠償(請求額は1000億円)と製品の差止めを求める訴訟を提起したとの記事が掲載されました。
近年、日本企業が有する重要な技術が、技術者の引き抜きなどによって、海外企業に流出していることが問題視されていましたが、世界的な大企業同士でこのような争いになる例は極めて珍しいといえます。
わが国では、不正競争防止法によって、営業秘密が保護されており、技術情報が不正流出したような案件では、不正競争防止法に基づいて、差止めと損害賠償を求めることが可能です。
しかし、営業秘密の漏えいの案件で訴訟を起こし、勝訴することは決して容易な道ではありません。
1つの問題点は、漏えいの事実を立証することが困難な点にありますが、もう1つ忘れてはいけないのが、わが国の判例では、十分に秘密管理されていない情報についてはそもそも「営業秘密」にはあたらないとの考えがとられていることです。
たとえば、社内の誰でもアクセスできるコンピュータに保存されている情報や、紙に印刷したものを「秘」の印もつけずに保管していたような場合には、「営業秘密」とはいえないとの判断がなされがちであり、そのような管理しかなされていない情報に関しては、不正競争防止法による保護が否定されることになります。
そのため、技術ノウハウを営業秘密として守っていくためには、会社の内部で営業秘密の管理体制を整備することが何よりも重要となります。
営業秘密の管理体制の整備に関しては、経済産業省が「営業秘密管理指針」を定めていますが、この指針の基準を参考にして、会社にあわせてオーダーメイドで仕組みを作っていくことが重要になります。
特に、営業秘密保護に関してこれまであまり意識をしてこなかった会社の場合には、営業秘密管理規程を作成し、そのうえで、まずは何が営業秘密なのかの選別からはじまり、そのランク付け、紙情報及び電子情報に関する管理体制の整備、社内の啓もう活動、管理状況のチェックなど、ある程度時間をかけた形での体制整備が必要になるでしょう。
レクシアでは、これまでも、営業秘密管理体制の整備案件を複数件担当させていただいておりますが、情報の共有化・効率化を阻害しない形での社内体制を構築していくために、会社の担当者の方と緊密に意見交換をしていくことが重要であると常々実感しているところです。
(先日の契約セミナーでの山田弁護士・弁理士)
山田威一郎
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