大阪・中之島 レクシア特許法律事務所のブログです。

2012年12月25日火曜日

企業と大学との共同開発契約の問題点


山田です。

ここ数か月、知財契約に関するセミナーのご依頼を複数件いただき、色々なところで講演をさせていただいています。

今年の9月には公設試の知財担当者の方向けに、企業と公設試の共同開発契約の問題点に関する講演をさせていただき、12月には、日本ライセンス協会で、「知的財産契約の要点と落とし穴」とのテーマの講演をさせていただきました。



また、来年1月21日には、大学の知財担当者の方向けに共同研究における知財トラブルとその対応」とのテーマの講演をさせていただくことになっています。

上記のセミナーではいずれも企業と大学(または公設試)との共同開発契約に関してお話しをさせていただいているのですが、企業と大学(または公設試)との契約では、企業間の契約とは異なる様々な問題点があります。

その典型が「不実施補償」と呼ばれる条項です。


特許法73条によると、共有の特許権に関しては、特許権者は他の共有者の同意なく(実施料の支払いなく)特許発明を実施できるとされているほか、第三者にライセンスをする場合には相手方の同意が必要であるとされています。

しかし、このルールを大学と企業の共同開発の場合に適用すると、大学にとっては何の旨味のない契約になってしまいます。

大学は自ら発明を実施したり、製品を作ったりする能力がないため、どこかの企業に発明を実施してもらい、その際にライセンス料をもらう以外に、発明から利益を得る方法はありませんが、上記の特許法のルールによると、大学は共同開発の相手方の企業から実施料をもらうことはできず、また、他の企業にライセンスをすることもできなくなってしまうためです。




そこで、大学と企業の間の共同開発契約では、共同開発のパートナー企業が発明を実施する場合に、大学に対して、「不実施補償」との名目で対価を支払う義務を定める条項が設けられることが良くあります。

しかし、この不実施補償に関しては、特許法が定めるデフォルトのルールを変更するものであるため、企業側の抵抗が大きく、話し合いがこじれることが珍しくありません。


当職は、某大学の知財顧問をさせていただいている関係で大学の側から相談を受けることもあり、逆に、企業の側から相談を受けることもありますが、この不実施補償の問題に関し、いかにして双方が納得できる解決に導くかに頭を悩ませています。

最近では、産学連携の実務もある程度進んできており、大学サイドもある程度柔軟な対応をしている例が増えてきているように思いますが、当職も、セミナー等で意見交換をしていくなかで、企業と大学との相互理解の深化のお手伝いをしていければと思っています。

山田威一郎


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